開設 1997/10/4
改訂 1997/12/8
移設 1999/4/29

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銀幕のいぶし銀 from N.Y・第80回

『シカゴ』

('02・アメリカ)

監督:ロブ・マーシャル
出演:リチャード・ギア、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、レニー・ゼルウィガー

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 ニューヨークはミュージカルの街でもある。ブロードウェイを中心とした商業演劇としてのミュージカルは勿論のこと、映画のミュージカルにおいてもニューヨークは数多く登場してきた。ミュージカル劇の映画化だけでなく近年は『雨に唄えば』や『モダン・ミリー』などミュージカル映画の舞台化も盛んに行われている。今回紹介する『シカゴ』は、映画『オール・ザット・ジャズ』で有名なボブ・フォッシーが1975年にブロードウェイ向けに製作したもので、当時も興行的に成功を収め、1996年にリバイバル公演が始まってから現在に至るまで更にヒットを続けている演劇の、まさに待望の映画化なのである。


 オリジナルの舞台は、独立したミュージカル部分とストーリーを展開する部分が自由自在に錯綜する構成になっており、映画化にあたってそこをどう巧みに再構築するかがカギとなっていた。監督のロブ・マーシャルは映画こそ初めてだが、舞台のミュージカル演出家としての豊富な経験から、ミュージカル部分として空想ともイメージとも思えるようなシーンをストーリーに並立させるという手法で見事に映画化に成功している。


 これはミュージカル映画の歴史を知るものにとっては実は慣れ親しんだ手法でもある。40年代から50年代に隆盛を極めた数々のMGMミュージカルが、クライマックスになると主人公の夢想する大スペクタクル・レビューシーンを配置するというのは、『巴里のアメリカ人』『バンド・ワゴン』などを思い出すだけで明らかなのである。この映画が古典的ミュージカル映画を念頭に置いているのが更にはっきり分かるのが、レニー・ゼルウィガーの歌い踊るナンバー「ロキシー」である。スパンコールの衣装に身を包んだ金髪の美女が、シルクハットの紳士達と恋愛のステップを繰り広げる様は、マリリン・モンローの『紳士は金髪がお好き』を嫌が上にも想起させるのだ。


 このように『シカゴ』は、古典的ミュージカル映画の果実を受け継ぎつつも現代的なアレンジを施し、いかにもアメリカらしいミュージカル映画を現代に復活させたというだけでも十分賞賛に値するが、中でもいいのはリチャード・ギアが、体当たりとしか言い様のない素晴らしい演技を見せてくれるのである。今回歌とダンスに関して吹き替えは一切使っていないということだが、R・ギアのダンスを見ればそれははっきりと分かり、そこに俳優陣の熱意のこもった娯楽精神が見て取れるのである。




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