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銀幕のいぶし銀・第63回 『助太刀屋助六』('2001・日活+フジテレビジョン) ―――――――― ―――――――― ―――――――― 岡本喜八といえば古くは『独立愚連隊』や『ああ爆弾』から、『ダイナマイトどんどん』『ジャズ大名』『大誘拐』など、一貫して軽快でテンポのいいアクションを持ち味とした佳作を撮り続けてきたわけだが、『EAST MEETS WEST』以来というから実に7年ぶりの新作となったのがこの『助太刀屋助六』である。 たまたま請け負った助太刀が楽しくて癖になり、そのまま助太刀を生業とするようになった男(真田広之)。誰にも仕えず何事にも捕らわれず、ただ自由にひょうひょうと生きてきたが、ひょっこり戻った生まれ故郷で、一度も会ったことのなかった父親の真実を知り、自ら仇討ちに乗りだすことになる。そこにケンカ友達との友情や幼なじみの愛情がからんで事件が展開していくという、時代活劇エンターテイメントである。 この映画がいいのはまず主人公の真田広之で、勝手気ままに生きる男をまさに軽快に演じている。やや三枚目のお調子者ぶりも、イヤミにならずに身のこなしも軽くひょいひょいと演じていく様は、ある意味はまり役といっていいと思う。鈴木京香の田舎娘ぶりや悪役の岸部一徳も中々のもので、実に見事なまで役にはまっていくのが見ていて小気味よい。演技におけるこの「軽み」こそ岡本喜八の真骨頂であることを久しぶりに思い出させてくれる。 そしてこの映画で特徴的なのは、全編を通したテーマ音楽である。山下洋輔のアップテンポなジャズに、和太鼓や笛がからんで、非常にリズム感のいいテーマを奏でてくれるのだ。こういうちょっとしたヒネリ、遊び的要素に加え、いつものように短いカットを畳みかける編集のリズムが少しずつ積み重なって、全体として映画が非常に軽やかに、何とも楽しく展開していくのだ。 岡本喜八もいよいよ80歳に近づきつつあるそうだが、まだまだこのような軽快な佳作を生み出せるとなると、その秘めたるパワーたるや恐るべきものがあるといわざるを得ない。日本映画の黄金時代には普通に見られた映画的「軽み」も、現在実現するのには相当の苦労が必要で、この映画のように伝統的な映画演出の技法を積み重ねて、ここまで正統的に時代劇を構築していける人は、今は非常に限られているのである。そういう意味では、久しぶりに現れた伝統的映画の「軽み」を体感できるというだけでも、今この映画を見ておく意義は十分感じられる作品だと言えよう。
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