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銀幕のいぶし銀・第58回 『Red Shadow 赤影』(2001年・東映など) ―――――――― ―――――――― ―――――――― 『猿の惑星』や『チャーリーズ・エンジェル』など、ここ最近の映画界の流行として、20年以上前の人気映画・テレビシリーズのリメイクがある。今回の『赤影』もその流れの中で映画化されるわけだが、かつての特撮テレビシリーズ「仮面の忍者 赤影」を大幅にアレンジした異色の大型時代劇として注目度が高いのである。 監督の中野裕之はいわゆるビデオ・クリップやCMを多く手がける才能の持ち主で、3年前の劇場デビュー作『SF サムライ・フィクション』で話題を攫ったのが記憶に新しい。この映画の成功がきっかけとなり、今回の『赤影』の監督に抜擢されたという。 かつて人気の高かったテレビシリーズを、単にスケールアップするのでなく全くオリジナルとして復活させるという企画だけに周りからの期待も高かったと思われるが、中野裕之は殆ど元の設定を捨てて、中身は全く現代的な新しい「赤影」像を生み出すことに成功している。 さすがはビデオクリップ界の人だけに、俳優の芝居を見せようという意志は殆ど感じられず、ひたすら赤影たちのアクション、スタイルを徹底的に格好良く見せることに腐心しているのが分かる。またその演出意図を活かす形で、特撮といってもCGではなく古典的にスタントを多用し、あくまで人間の肉体で見せようとしているのが逆に映像の豊かさを生み出している。そこに重厚な映画美術が加わると、今どきの日本映画では考えられないくらいの「映画的贅沢さ」が出現してしまっているのである。 この映画は、今の日本映画界がともすれば忘れがちな映像的豊かさを、まさにアメリカ映画的な意味で真っ正直に取り組もうという試みであり、またその意味では確かに評価されるべき仕事をしていると言えよう。 またこの監督が相当時代劇映画を研究していると思われるのは、現代の若い俳優陣が時代劇の所作をこなすことなど不可能であることを十分承知していることだ。あえてチャンバラなどの正統派時代劇的な演出プランになることを周到に避けつつ、しかもアクションシーンとして成り立つようなカット割・編集に徹しているのは一目に値する。勿論忍者映画だから普通の時代劇に陥ることはないとはいえ、そこには確実に、時代劇映画の作法とも言うべきポイントを継承しようという意志がある。 その結果、往年のファンのみならず、「赤影」を全く知らない若い人たちまで楽しめる、単純な和製アクション映画としてエンターテイメントが出来上がっているのだ。むろん昔の「赤影」ファンなら必ず知っている決まり台詞や決めのポーズをさりげなく配置してくる演出は心憎いとしか言い様がない。
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