銀幕のいぶし銀・第48回
『U-571』
(2000/アメリカ)
脚本・監督:ジョナサン・モストウ
出演:マシュー・マコノヒー、ビル・パクストン、ハーベイ・カイテル
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久々に、正統派戦争アクション映画の快作が登場した。J・モストウ監督の『U-571』である。戦争、ことに第2次世界大戦をモチーフにした映画はこれまで数限りなく製作されているが、最近は『プライベート・ライアン』に代表されるような人間ドラマ的モチーフの作品が目に付くだけに、この作品のような純粋にアクションを打ちだしたのは久しぶりではないだろうか。
極秘指令を受けたアメリカ海軍の潜水艦が、ドイツ軍のUボートに接近し、暗号解読機を奪取する。作戦は成功したかに思えたが、土壇場で敵に襲撃をくらい味方の船は撃沈、わずか数名のみが損傷した敵のUボートを奪って逃げる。互いに傷を負いながらも、様々な工夫と咄嗟の機転で必死に戦い続ける、という戦士達の物語である。典型的な戦術級ストーリーテリングであり、刻一刻と状況が変化する中、限界に挑戦しながらも辛うじて危機を切り抜けていくドラマ展開は、一時も緊張が途切れることなく、ラストまで一気に見せられる。稠密に練られたストーリーである。
監督のJ・モストウは、カート・ラッセル主演のデビュー作『ブレーキ・ダウン』から、やはり正統派の娯楽アクションでスマッシュヒットを記録している。こちらはアメリカの荒野を走るハイウエイが物語の舞台で、平凡な夫婦が長期ドライブ中に謎の集団に襲われ、奥さんが行方不明になる。カート・ラッセルは誰の支援も受けられない中、誘拐された奥さんを奪回するというアクション映画である。今どき珍しく徹底的に娯楽アクションにこだわっている監督らしく、荒野のハイウエイが逆にどこにも逃げ場のないある種の閉鎖的空間として見事に成立していて、極めて緊密なアクションが展開されるのである。
下手な人間ドラマに陥ることなく、アクションのディテールにこだわって一気に見せきっていく手法は本来アメリカ映画が得意としたところなのであるが、大作主義・SFX主義という名の大味な作品群がこのようなジャンルを衰退させていったように思える。この監督のように、ディテールを正確に描写できる技量を持つ監督が最近は本当に少なくなっているのではないだろうか。
アクションの面白さこそ、映画の古典的な楽しみの基本であり、SFXが進歩して映像表現の幅が飛躍的に広がっている現在だからこそ、このような演出的見せ方の技量が問われるのである。
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