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銀幕のいぶし銀・第99回

『パッチギ!』

(2004年・日本・119分)

監督:井筒和幸
出演:塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ

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 現在はどちらかというとテレビの深夜番組での活躍が有名になってしまった井筒和幸監督だが、『ガキ帝国』や『岸和田少年愚連隊』などケンカに明け暮れる高校生たちの青春ストーリーを描かせたら右に出るものはいないのである。最近は『のど自慢』『ゲロッパ!』などで多彩な演出を見せてくれていたが、今回の『パッチギ!』では久しぶりに初心に帰ったような青春群像劇で、京都の高校生たちの恋愛とケンカと友情の毎日をリズムよく描写していくのである。


 グループサウンズがブームを巻き起こす1968年の京都。彼女が欲しい高校生の康介が一目惚れした相手・キョンジャは、争いが絶えない朝鮮高校の番長・アンソンの妹だった。キョンジャがフルートで練習する曲が「イムジン河」だと知った康介は、フォークグループの結成をもくろみ、何とかキョンジャに近づこうとする。一方アンソンはケンカの日々に別れを告げ、サッカーの能力を生かして朝鮮に戻ろうと考え、付き合っている彼女・桃子と別れようとするが、桃子のお腹の中には赤ん坊が宿っている…在日朝鮮人問題を大きな背景にしながらも、あくまで物語は高校生たちを中心に、様々な人物が錯綜しながら群像劇として突き進んでいくエンターテイメントとして成立しているのだ。


 韓流が大ブームとなった去年を経過したからこそ、このような物語背景も素直に受け入れられる土壌が出来てきたのだと思うが、日朝の文化的狭間にとまどう主人公たちを描くのに、むしろ『ウエストサイド物語』のように、ある絶対的な悲劇の要因として舞台背景を利用しているのがこの映画の特色であろう。だから京都を舞台にしているにもかかわらず、観光名所的な要素は当然徹底的に排除されているし、学生運動・映画館をはじめとするアングラな場所が多用されている。にもかかわらず、画面のそこかしこから確かに京都のにおいが漂ってくるのは、むしろ京都という町の力と「たたずまい」のようなものを画面にすくい取った演出のなせる技であろう。


 井筒監督の青春群像劇にはハードなケンカシーンがつき物だが、それが単に見せ物的にならずに物語に絡まっていくのが井筒和幸の醍醐味で、それはひとえに登場人物の魅力なのである。今回も塩谷瞬、高岡蒼佑などかなりいいキャスティングが光るが、沢尻エリカもまたヒロインの条件に欠かせない絶対的な魅力を放つのが素晴らしい。生々しいケンカを繰り広げながらも、物語があくまでもファンタジックなのは、今の日本映画ではなかなかお目にかかれない映画的魅力を持った彼ら故であろう。





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