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銀幕のいぶし銀・第98回

『市川雷蔵祭 艶麗』

監督:溝口健二・増村保造ら
出演:市川雷蔵

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 ひょんなことから脚本家であり小説家の星川清司氏の面識を得た。氏は昭和三十・四十年代の日本映画黄金時代に専ら大映・日活で活躍した名脚本家であり、「眠狂四郎」シリーズなど優れた時代劇脚本で名をはせ、後に小説家としても直木賞を受賞するほどの筆の持ち主である。


 数々の素晴らしい作品の中でもとりわけ俳優市川雷蔵・監督三隅研次のトリオでの仕事が印象深いのであるが、氏によれば彼らとの出会いは全くの偶然が重なったものだという。現代劇がメインの大映東京撮影所で専属契約だったにもかかわらず、たまたま大映京都のプロデューサーから脚本執筆の依頼が舞い込んできた。それが子母沢寛の『新撰組始末記』だったのであるが、氏は原作も知らないどころか時代劇など書いたこともない。しかしタイミング的にこの仕事を引き受けてしまう羽目になり、それから原作を読んで驚いた。ご存じの方も多いと思うがこの原作は物語ではなく、新撰組の活動をただ克明に記録した日誌のような作品なのである。結局はストーリーを一から書き起こす作業となり、何度も京都を往復し三ヶ月以上の時間をかけてようやく台本の形にしたものの、撮影所からは長らく返事が返ってこなかった。あの企画はやはりボツになったのかと諦めかけた頃、プロデューサーから連絡があった。


 曰く、思うように企画が進行しないのでそのまま台本を撮影所にほっぽり出しておいたところ、偶然通りかかった市川雷蔵がその台本を目にとめ、一読していたく気に入り、自分の主演百本目映画に決めてしまったというのである。さらに雷蔵は旧知の若手監督・三隅研次のもとへ台本を持ち込み、話をまとめてしまった。そんな顛末で『新撰組始末記』は出来上がり、時代劇に硬派なドキュメンタリータッチを導入した傑作として映画史に名を残すことになる。それにしても黄金時代の撮影所というのはそんなマジックのような空間だったのであり、とりわけ大映京都は市川雷蔵・勝新太郎などきら星のような映画スターを擁するだけでなく、撮影・照明・美術などにおいてもまさに職人技というしかない高度な映画技術が結集しており、大映京都の時代劇作品は文字通り日本映画界の至宝ともいうべき存在なのである。市川雷蔵作品を中心とした特集上映は十年ほど前から組まれていたが、催されるたびに雷蔵ファンを増やしていくというのも納得のいく話である。まさに映画以外の何者でもない濃密な魅力を放つ素晴らしい映画をスクリーンで味わうという贅沢を、この機会に体験してもらいたいのである。





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