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銀幕のいぶし銀・第97回

『オールド・ボーイ』

(2004年、韓国)

監督:パク・チャヌク
出演:チェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・ヘギョン

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 東京国際映画祭でイ・ビョンホンとチェ・ジウ来日となり相当数のファンが大挙している状況を見ても、いわゆる韓流ブームはまだまだ衰えを知らず当面続くのは間違いない。今年に入ってから韓国ドラマだけでなく韓国映画も次々と日本に入ってきているが、その中でも今秋最も注目を集めているのが、今年のカンヌ映画祭を『華氏911』と共に湧かせたこの『オールド・ボーイ』である。


 ごく平凡なサラリーマンがある日突然監禁される。監禁場所も、犯人も、監禁される理由も全く分からないまま、外部と完全に遮断された一室で男は長い日々を過ごすことになる。そして15年の月日が経ち、男はまた突然外界へ放り出されるのである。訳が分からないながらもただ復讐心に駆り立てられ、わずかな手がかりをたぐりながら犯人を捜す男。やがて男を応援する若い女も現れ、監禁場所も見つけ出し、犯人も特定できたが、最も肝心な監禁理由がどうしても分からない。恐るべき犯人と対決を繰り返す男はやがて、自分が壮絶な罠にはめられていたことを知り、長年隠され続けてきた真の事実を知るのである。この原作となった日本の同名漫画は8年ほど前に発表されるやいなや漫画ファンの間で話題になり、隠れた傑作として知る人ぞ知る存在であったが、傑作『殺人の追憶』の監督ポン・ジュノがこの原作を知り、パク・チャヌク監督に推薦したことから映画化が始まったという興味深いエピソードもある。今の韓国には想像以上に日本文化が入り込んでいる好例とも言えるが、それがカンヌ映画祭でグランプリを受賞し、更にハリウッドでリメイクされるまでに発展していくとは誰が想像できたであろうか。もしこの原作が普通に日本で映画化されていたら、これほど国境を越える面白さが出せたかどうか逆に分からないのである。そういう意味で、この巡り合わせは何とも幸運だったと言えよう。


 この映画は原作の複雑なストーリーを忠実に再現することに成功しているが、それだけでなく主演のチェ・ミンシクの芝居がまさに執念としかいいようのない濃度で迫ってくるのである。彼は今の韓国を代表する映画俳優の一人であるが、韓国映画の好調を支えているのは実は彼のような演技派の映画スターが多く揃っているからに他ならない。それこそペ・ヨンジュンにせよイ・ビョンホンにせよ、見かけ倒しでなくスクリーン映えする堂々としたスターの存在なくして映画は面白くなりようがないのだが、翻って今の日本映画界で最も欠けているのがこの映画スターという存在なのかもしれず、それ故に日本人が韓国にまで向かってスターという存在を求めるのかもしれないと痛感させられるのである。





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