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銀幕のいぶし銀・第95回

『華氏911』

(2004年、アメリカ)

監督:マイケル・ムーア
出演:ジョージ・W・ブッシュ

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今年のカンヌ映画祭で驚きのパルムドール受賞となった話題の作品がいよいよ公開となった。監督は『ボーリング・フォー・コロンバイン』で独特の突撃取材スタイルを確立し、先日もNYでの共和党大会に反発して大々的なデモの先陣を切ったマイケル・ムーアである。全米でドキュメンタリー映画としては驚異的な興行収入1億ドル突破の新記録を樹立、日本でも同様に絶好調の快進撃を続けている。


内容的には既に数々のメディアで取り上げられている通り、ブッシュ現大統領が4年前の大統領選で辛くも勝利を納めた際、影で票を操作して共和党有利に持ち込んでいたという疑惑の指摘から始まり、01年9月11日のNY同時テロ事件に対してブッシュがいかに無能な対応しか出来なかったかを揶揄するにとどまらず、ブッシュ一族とビン・ラディン一族が実は経済的に深い結びつきをもっており、彼らと大企業・軍事産業のみ恩恵に浴するイラク戦争がまさしくブッシュ自身の手によって巧妙に仕組まれていく様子を描き、戦争の犠牲者はイラク国民であると同時に実はアメリカ国民自身であるという主張を繰り広げる。M・ムーアお得意のブラックユーモアを機関銃のように撃ち続け、徹底した反ブッシュ・反イラク戦争の視点から現大統領を痛快に批判するのである。


当然だが、この映画が大統領選の繰り広げられている今夏に公開されたことは偶然ではなく、映画の中でもM・ムーア自身民主党支持者であることを公言している。それゆえこの映画は単に監督のアジテーションにすぎないと批判する向きも多いのは事実である。しかし彼のブッシュ批判が適切かどうかはともかく一本の映画としてこの作品を捉えるならば、現実を直截に切り取るメディアとしての映画の強烈な威力を久しぶりに垣間見ることの出来る作品であることだけは間違いない。うがった見方をすれば、いわゆる「自由」の国アメリカにおける言論は一般には相当に統制されており、いくら当事国とはいえアメリカ国内で真に率直な意見を述べる事自体が想像より遥かに厳しいという事実を間接的に立証しているともいえる。この映画をアメリカ国民が喝采で迎え入れる根本理由は実はその映画の力・八方破れな自由の希求にある。これは日本のように岡目八目的な報道に慣れきった状況からすれば、随分退歩的な印象を受けるかも知れないが、実は逆に当事国の人間だからこそ持ち得る信念の力、発言内容の真偽ではなく発言するという行為そのもののシンプルな力強さを見せつけられるのである。これもまた、現在のアメリカ人にしか成し得ない現在のアメリカ映画の一つの姿なのだ。





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