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銀幕のいぶし銀・第93回

『69 シクスティナイン』

(2004年・東映など)

監督:李相日
出演:妻夫木聡、安藤政信、太田莉菜、柴田恭兵

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 3年前に映画『GO』がヒットして以来、東映では若手のパワフル青春映画路線ともいうべきジャンルが出来つつあるようで、今回紹介する『69』もまさしくその文脈を踏まえて作られた映画と考えられるが、完成した作品を見るとこれが『GO』よりもさらに新しい世代性を感じさせる、なかなか興味深い映画なのである。原作は村上龍が15年ほど前に発表した同名小説であり、1969年の佐世保で高校生たちが活躍する自伝的青春物語だが、今回大抜擢された監督・李相日は弱冠29歳にしてメジャー映画初挑戦という期待の新鋭で、脚本は今や日本一の売れっ子宮藤官九郎、両者共に69年にはまだ生まれてさえいないのだ。


 確かにいま日本映画には世代交代の波が訪れている。『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲や『茶の味』の石井克人など、30代半ばの世代が大いに活躍しているが、この『69』のスタッフは(キャストも含めて)彼らより更に一世代若い。このような周辺状況の中で出現した映画が、例えば「エネルギッシュ」とか「パワーあふれる」あるいは「荒削り」とか「ストレート」というような、「若さ」というイメージにつきまといがちな言葉で表現できるのかというと、それがむしろ逆なのが単純に驚きなのである。無論若い映画だし、エネルギーを感じもするのだが、見ていて伝わるのはむしろ全く奇をてらわない手堅さ、細部まで良く計算され、客観的な地平からクールに物語をまとめ上げた、どちらかと言えば職人監督的なこなれた手さばきを感じさせる作品なのである。


 いわば試験の模範解答を見ているような作品なのであるが、このような映画が出現する背景を考えて思い至ったのは、やはり監督を育てる環境がここ10年ほどで大きく変化しているのが影響しているのであろう。それまでは、監督になろうとするものは殆どの場合何らかの撮影現場を経験するしかなかった。プロの現場体験を経て、製作関係者や映画会社の人脈を築いていきながら監督へ近づいていったものだが、李相日はじめ、ある年代以降の若手監督の多くは映画学校という確固とした養成機関で文字通り「育てられて」いる。映画作りを肉体的に会得していった従来の監督に対し、教育=思考として映画を身につけた人の作る作品はこんなにも違うものなのかと驚き、また同時に、そんな彼らが1969年などという「熱い」時代を描くのに際し、あくまでクールに距離を保ちつつもどこか憧れを感じているのではないかと思わずにはいられない。それがきっと、教育からは得られることの出来ない映画の肉体的なエモーションの躍動なのである。





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