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改訂 1997/12/8
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銀幕のいぶし銀・第91回

『世界の中心で、愛をさけぶ』

('04・「世界の中心で、愛をさけぶ」製作委員会)

監督:行定勲
出演:大沢たかお、柴咲コウ、長澤まさみ、森山未來、山崎努

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 『きょうのできごと』が現在もヒットを続けている監督・行定勲だが、早くも次の新作『世界の中心で、愛をさけぶ』が公開された。原作の同名小説は若い女性を中心に200万部を超す大ベストセラー、売れっ子監督と大沢たかお・柴咲コウの顔合わせということで話題には事欠かない作品であるが、映画の出来も話題性に負けない全く素晴らしい恋愛映画に仕上がっているのには驚かされる。


 大沢たかおの婚約者・柴咲コウが結婚式の直前に突然失踪し、郷里である四国の海辺の町に戻ってしまう。婚約者の行方を追いかける大沢は、高校時代の自分の初恋にまつわる出来事が、失踪のきっかけになった事を知る。それは本当に美しくまた切ない初恋の思い出で、映画はこの80年代・高校生の純愛物語をベースに進んでいくのだが、この話だけ取り上げればまさしく恋愛ものの王道中の王道、一歩間違えば単なる陳腐な作品に堕してしまうストーリーを、行定はあらゆる細部を地道に突き詰めることで古典的な意味でのファンタジーへと昇華していくのである。


 大沢の高校生時代を演じる森山未來と、初恋の相手の長澤まさみがまず素晴らしい。微妙な感情表現を自然に描くことには定評のある行定も、今回は物語がオーソドックスだということもあり、特に演出面において「古典性」を一つのキーにおいているように見受けられる。例えば森山未來がスクリーンに出てきた瞬間、ああ彼は大沢たかおの若い頃だと一目で分かるのだが、それは単に顔かたちが似ているだけではなく、明らかに両者が同一性を保つように演出的な配慮がなされているからである。それは『ミスティック・リバー』などクリント・イーストウッド作品でしばしば登場するような、台詞の端々の言い回し、ちょっとした仕草など、些細なディテールの積み重ねによってのみ達成されるのだ。また長澤まさみも、もともと80年代アイドル的な資質の女優であるが、その容姿を自然に生かすべく当時のアイドル映画を研究して芝居を組み立てているのが随所に見受けられる。それに応えた長澤の素直な魅力が映画の力に直結しているのである。


 ウォークマンやラジオの深夜放送といった80年代的モチーフを生かし、当時の時代性を土台にしているのは、ひとえに現代と異なる「別世界=夢=虚構」を際だたせるためである。夢のような純愛と抑制された演出といえば『マディソン郡の橋』を思い起こさせるが、この映画もそれに負けないくらい、古典的映画の記憶が刻み込まれた珠玉の恋愛映画の一つと言えるのである。





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