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「銀幕のいぶし銀」第9回

『うなぎ』('97年、日本/衛星劇場+ケイエスエス)

  監督;今村昌平
  出演;役所広司、清水美砂、倍賞美津子、田口トモロヲ、柄本明

  97年度カンヌ映画祭パルム・ドール受賞

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 この作品は70才になる今村昌平監督の最新作であるが、今年5月の仏・カンヌ映画祭でパルムドール(グランプリ)を受賞したのが記憶に新しい。今村映画にしては軽快なタッチで、様々な男女の過去と愛憎劇を描いていく。

 妻殺しの男(役所広司)が仮出所する。すっかり人間不信に陥っているこの男は、周りの温かい目にも無感情で、飼っているうなぎにしか心を開かない。河沿いの小さな町で理髪店を開いてつつましく暮らすつもりが、謎の女(清水美砂)の登場とそれにまつわる様々な事件によって、だんだん彼の過去があからさまになっていく。こういった比較的古典的な話の仕立てではあるが、しっかりとした演技に支えられて、見るものを飽きさせずに引き付けていくのが、やはり長年の実績を感じさせる。

 その中軸となる主演の役所広司が、難しい役どころを自然体で演じている。平凡でいかにも真面目そうだが一旦感情が爆発すると凄い存在感を示すという、今回の役どころがいかにもはまっていて気持ちがいい。クライマックスで大騒ぎになると、思わずカミソリを手に取る時の姿が非常に印象的だ。彼は最近『失楽園』『Shall we ダンス?』などの話題作に軒並み主演し、その演技が高い評価を受けているが、至極もっともなことである。それに、少しづつ役所広司に引かれていく女を演じる清水美砂。様々な過去を背負った役を、やはり淡々と演じているのが好感がもてる。この映画の魅力はこのコンビがうまくいっているところが大きいだろう。

 今村昌平は一貫して、人間の「悪意」とも呼べるダークな部分を映画のテーマとして好んで取り上げてきている。14年前にカンヌを取った『楢山節考』もそうであった。今回はそれが全面には出ていないが、例えば役所広司をやっかんで何とか不幸にしてやろうとする柄本明などは、その小悪党ぶりがなかなかにリアルだし、田口トモロヲが実につまらない男を演じているのもそうである。このダークさ、悪意の魅力が物語のベースにちゃんと成り立っているからこそ、主人公らの気持ちの高まりがしっかりと感じられるような作りになっているのだ。実はこの構造こそ全く伝統的な日本映画のものではあるが、それにしっかりと根差した演出と演技、その総合が緊密に完成されている。このような演出の映画が素直に好感されていること自体、今の日本映画にはなかなか得難い体験なのではないだろうか。

                      1997年 6月 26日





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