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銀幕のいぶし銀・第85回

『座頭市』

(2003・『座頭市』製作委員会)

監督:北野武
出演:ビートたけし・浅野忠信

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 今回は、ベネチア映画祭監督賞受賞の話題作『座頭市』を取り上げたい。この映画は言うまでもなく、勝新太郎の一世一代の当たり役「座頭市」シリーズを装いも新たにリメイクしたものである。過去作品のリメイクが大流行の最近の映画界でも、この作品に関してとりわけ注目に値するのは、まず何と言ってもあの北野武が監督・主演するところであろう。日本では北野武はテレビでのイメージがどうしても強すぎるのだが、世界映画的なレベルから見れば、彼は間違いなく今の日本を代表する第一級の映画監督の一人であるし、常に世界の注目を集め続けている監督の一人であることは強調しておいてもいいと思う。そして過去の「座頭市」を知るものなら分かるが、このシリーズはまさに娯楽映画の決定版であり、座頭市イコール勝新太郎と言い切れるほどイメージが出来上がっている。それを今の観客に向けてどのように料理するかが、映画の成否を左右する最初の関門なのである。


 そしてその期待と重圧は北野武も十分承知の上だ。映画を撮るに当たって、過去の座頭市シリーズをまともに引き受ける事は出来ない、しかし座頭市シリーズを支えている娯楽映画的な破天荒な要素をいかに引き出すか、というようなことをインタビューでも答えている。


元々の座頭市は盲ながら居合い抜きの達人で、一方金や女に汚いというダーティな側面も持つキャラクターであり、そこに勝新太郎自身の演技ディテールが重ねられ、いかにも人間くさい人物を作り上げていったものだが、今回北野武は端から金髪やジーンズ履きなどという外見面から新機軸を打ち出してきているのが興味深い。勝新太郎の演技の積み重ねが古典的なアプローチなら、北野武の外見から入っていく手法はいかにも現代の演出家のものとも言える。ここにこそ、昔のシリーズをどこで割り切るかという冷静な計算と同時に、勝新太郎と昔の座頭市シリーズを汚すことだけは出来ない、という尊敬と畏怖の念を読みとることが出来るのである。それは例えばQ・タランティーノの新作『キル・ビル』が、素知らぬ顔で過去のB級娯楽映画を模倣するにとどまっているのに比べても、日本映画という看板を背負っている者の矜持、つまり極めて映画的に真摯な態度であるといえるだろう。その上で、昔のシリーズのことなど殆ど知らない今の観客に、十分アピールするだけの娯楽性を発揮し、結果大ヒットを記録しているというのにはただ感心するしかないのである。




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