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改訂 1997/12/8
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銀幕のいぶし銀 from N.Y・第76回

『ボウリング・フォー・コロンバイン』


('02・アメリカ)
監督:マイケル・ムーア
出演:マイケル・ムーア、マリリン・マンソン、チャールトン・ヘストン

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 「銀幕のいぶし銀」久しぶりの登場となったが、現在、映画製作の勉強のため、文化庁の海外研修制度でニュー・ヨークに滞在している。ハリウッドが劇映画の中心なのに対して、ニュー・ヨークはインディペンデント映画のメッカ。古くはジョン・カサヴェテス、ウディ・アレンから、スパイク・リー、クエンティン・タランティーノらを輩出した街で、『ギャング・オブ・ニューヨーク』の監督マーティン・スコセッシ、俳優ロバート・デ・ニーロら、ニューヨークを中心に活躍する監督・俳優も多く、勿論『スパイダーマン』などロケ場所としても頻繁に使われているのは御承知の通り。先日など偶然ジュリア・ロバーツ主演の新作映画の撮影現場に通りかかったので、少し見学させてもらった次第である。
 そしてニューヨークはドキュメンタリー映画の中心でもある。ロバート・クレイマー、フレデリック・ワイズマンなど世界的なドキュメンタリー作家がここで活躍し、現在でも数多くの作家たちがここでキャメラを回しているのだ。


 今回紹介する『ボウリング・フォー・コロンバイン』は、昨年度のカンヌ映画祭で熱狂的な支持を受け、この映画のために特別賞まで作られたという話題のドキュメンタリーである。アメリカのある高校で起こった銃乱射事件をきっかけにしながら、銃の存在がアメリカ社会に落とす影の部分、それでも銃を捨てられないアメリカ社会の功罪を痛烈に皮肉った快作である。
 この映画が成功しているのは、ドキュメンタリーというジャンルにありがちな教条主義的な説教臭さを見事に回避し、徹底したエンターテイメント作品に仕上げているところにある。ミュージックビデオのようにリズミカルな編集で密度の高い情報をテンポよく見せていく手際や、時にアニメーションも交えたコミカルで分かりやすい解説のみならず、監督で進行役もつとめるマイケル・ムーアの、真面目だが根っから明るいキャラクターが、映画を「教育番組」に陥らせない部分が大きいのだ。


 こちらでは映画は生活の一部として定着しているし、映画館内での観客の反応も鋭いのだが、この映画で驚かされたのは、「過激なロック文化が青少年に悪影響を与えているのでは」というありがちな教育論的見地に対してハードロック歌手・マリリン・マンソンが見事なカウンターパンチを見せるシーンで、観客から「その通り!」などと声が飛び交い、まさに一体となって盛り上がるのである。この瞬間観客は映画を見ながら思考を共有していた。
 テレビと違って映画は「共有」可能なメディアである。アメリカが映画の国というのは、映画産業が発達しているからではなく、日常のコミュニケーションとして映画が有効な役割を果たしているからであり、そういう意味で『ボウリング・フォー・コロンバイン』は、普段意識にのぼらない映画の別の力を発見できる貴重な作品なのである。




[ 銀幕のいぶし銀:目次 ]

Since 1997/10/4 - - - - - - by Hiroya YABE