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改訂 1997/12/8
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銀幕のいぶし銀・第69回

『ハッシュ!』

('01・シグロ)
監督・脚本:橋口亮輔
出演:田辺誠一・高橋和也・片岡礼子

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 デビュー作『二十歳の微熱』から一貫して、いわゆるゲイと呼ばれる若い男性同士の恋愛を描きつづけてきた異色の映画監督・橋口亮輔5年ぶりの最新作がこの『ハッシュ!』である。昨年のカンヌ映画祭で高い評価を得、東京では公開以来若い女性の圧倒的な支持を得てロングラン公開されている。

 仲良く同棲している田辺誠一と高橋和也のカップル。ただ田辺は自分の嗜好を隠して仕事をしており、職場の同僚の女性に好意を持たれても上手く説明することが出来ない。そんなとき不思議な女(片岡礼子)が現れ、突拍子もなく「結婚とか恋愛とかじゃなく、純粋に子供が欲しいから協力して欲しい」と言い出す。頼まれた田辺は困惑し、そのせいで高橋との関係もぎくしゃくし、さらに親兄弟含めた家族にまで騒動は飛び火していく。それをきっかけに改めて日本の家族の問題を見つめなおす事になっていく、という物語だ。

 ゲイのカップルなどというと一見現代的かつ興味本意なモチーフに思われがちであるが、この映画が面白いのはそのような表面的なレベルではない。周知のように古典的な映画ジャンルの中には「禁じられた恋愛」というテーマがあり、それは「ロミオとジュリエット」に代表されるような葛藤や悲劇性を自ずから有している。そしてこの映画における恋愛のあり様も典型的な「禁じられた恋愛」の形であり、この映画の面白さは単にカップルがゲイだからではなく、ゲイのカップルだからこそ物語がリアルに成り立っているからなのだ。現に主人公のカップルのどちらかを女性に置き換えれば、この物語は古典的な三角関係の恋愛物語そのものなのである。

 監督の狙いもまさにこのような古典的な意味での映画のリアリティにそそがれている。主人公たち若い世代の生活実感が極めて緻密に描かれていき、主人公たちを取り囲む年長者世代〜母親や兄夫婦らとのギャップと戸惑い、家族同士のやり取りなどが脚本レベルで極めて練り込まれたものとなっている。
 その上映画において家族というテーマを描いていくのは、日本の映画史上まさしく伝統的な一典型であり、その意味で『ハッシュ!』は、見掛け上の印象と全く違って、橋口監督の本来持っているオーソドックスな日本映画的良心が如何なく発揮された、極めて日本的・古典的な恋愛映画の系譜に位置づけられるのである。




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