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銀幕のいぶし銀・第68回

『阪妻映画祭』

出演:阪東妻三郎

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 今年は阪東妻三郎生誕100周年である。といってピンと来るのはある世代より上の人か中々の日本映画ファンであろうが、この機会に阪妻の傑作を一堂に集めた映画祭が始まっており、しかも中々の活況を呈しているというのは非常に嬉しい事である。いうまでもなくサイレント映画時代に剣戟スターとして一世を風靡、その後も『無法松の一生』『王将』『狐の呉れた赤ん坊』など人情味あふれる市井の人を演じれば天下一品、他にも『忠臣蔵』『決闘高田の馬場』など時代劇、喜劇『破れ太鼓』など様々な名作を残した一大映画スターであり、田村高廣・正和・亮の父親でもある。
 今回は大映・日活・松竹・東映・東宝の邦画5社が協力し、現存する作品の殆どを網羅、更にロシアで発見された幻の2作品『狼火は上海に揚る』『鍔鳴浪人』を加えたラインナップで、日本映画の黄金時代を築いた大スターの足跡が楽しめる趣向である。

 正直どの作品も面白く、日本映画の黄金時代の豊饒さを知る絶好の機会なのであるが、なかでも今回は『狼火は上海に揚る』に注目したい。この映画は1944年の作品で、戦争のためフィルムが消失し最早見ることの出来ない映画と言われ続けてきたのだが、当時の満州に送られたプリントがロシアのフィルムアーカイブで近年発見され、幻の映画発見と一時期話題になった作品である。
 監督の稲垣浩はサイレント時代からの大監督で阪妻とも名コンビを組み数々の傑作を送り出している。中でも二人の代表作とされる『無法松の一生』を撮った後の、次の作品が『狼火は上海に揚る』ということで、最も息の合っていた頃のコンビネーションを否応なく期待させられる。そして期待通り、この作品の阪妻がまた素晴らしいのである。

 幕末、尊皇攘夷思想を掲げる高杉晋作(阪妻)が上海に視察に渡る。当時の上海は阿片戦争後の租界地で、清朝とイギリス・フランス・アメリカらが覇権を競いあっている。苦しい生活を強いられる上海民衆の中から太平王の一派が出現し、やがて太平天国の乱へと繋がる世情を背景に、高杉晋作と太平王の一派との友情を描いた作品である。
 44年といえば太平洋戦争も大詰めに差し掛かり、軍部から映画製作への圧力は相当のものがあったはずだが、それらの圧力を巧妙に潜り抜けた脚本・演出・演技は素晴らしいの一言で、人間味あふれた阪妻はのびのびと高杉晋作を演じきっている。この時代にこれほどまで開放感あふれた作品があったというのも驚異的だし、今まで省みられる機会の少なかった戦時中の日本映画に触れる、絶好のチャンスともいえるのである。




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