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銀幕のいぶし銀・第60回

『忘れられぬ人々』

('2000/日本)
監督:篠崎誠
出演:三橋達也・大木実・青木富夫

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 1950年代から60年代にかけての、日本映画の黄金時代を支えた名優達が、21世紀に入った今共演を果たすというので話題の映画が『忘れられぬ人々』である。主役3人の平均年齢が78歳というから、まさしく老優たちの見事な競演が見物の映画である。

 かつて共に戦火をくぐり抜けた3人の戦友達も、今は各々地方都市で余生を送る身分である。一度はやくざな世界に身を置いたものの、今は足を洗って一人静かに暮らす三橋達也、長年連れ添った愛妻と二人三脚で小料理屋を切り盛りする大木実、そしてこの歳になっても女に目のない青木富夫。3人とも地味ながら生き生き元気に毎日を暮らしている。ところがその町にやって来た老人相手の悪徳霊感商法によって、愛すべきお年寄りたちが次々と犠牲になっていき、その非道ぶりに堪え兼ねた3人は遂に意を決して立ち上がる……という物語を通じて、改めて人間らしい生き方の美学というものを見せつけられるのである。

 しかもこれが見事な娯楽映画に仕上がっている。前半こそホノボノといわゆる老人映画らしく展開していくが、ある時点からこれが全く裏切られ、急激に人間臭い匂いを放ちはじめるのが素晴らしい映画なのである。

 主演の3人はそれぞれ、今どき見ることの出来ない安定感のある演技を披露する。三橋達也といえば、まずは川島雄三や成瀬巳喜男の映画にしばしば登場するドラ息子を思い出すわけだし、大木実といえば、何といっても東映仁侠時代劇で、高倉健らとともに悪漢達に切り込んでいく着流し姿が印象深い。青木富夫は小津安二郎の映画『突貫小僧』で当時一躍有名になった子役であった。この3人の古典的な演技は、今の俳優の演技とは質の違う芝居らしさがあり、映画の古典性を発揮しているのだが、何よりもこの映画の特色は、脚本の古典性である。この映画は、かつて量産された仁侠時代劇映画の枠組みを、極めて巧妙に現代に置き換えたものであり、古典的な俳優を使って古典的な物語を現代に甦らせるという、意表をついた意欲的な試みであると言えよう。

 監督の篠崎誠は、デビュー作『おかえり』で青木富夫をスクリーンに甦らせたとき、この老俳優の元気さに圧倒され、今回の映画の着想を得たという。自分らしく生きている人間は年齢に関係なく魅力的なのであり、しばしば人間らしさを置いてけ堀にしてしまいがちな現代生活の中で、自分を貫いていく生き方を続けること、その美しさを讚えた映画はまた美しい。シンプルで一本筋の通った、今では貴重な志の映画なのは間違いない。




[ 銀幕のいぶし銀:目次 ]

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