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「銀幕のいぶし銀」第6回

『ノーバディーズ・フール』('94,米/オライオン)

  監督;ロバート・ベントン
  出演;ポール・ニューマン、メラニー・グリフィス、ジェシカ・タンディ、ブルース・ウィリス

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 アメリカ映画は、派手なアクションやSFXを駆使した作品がますます幅を利かせる中、第一級の内実を伴う落ちついてしっとりした作品が、地味故に大した話題にならぬまま終わっていくケースが増えている。今回取り上げる『ノーバディーズ・フール』('94)もその典型であろう。

 この映画はまず、70才になるポール・ニューマンの最新作である。雪の降り積もる小さな田舎町を舞台に、金も家庭もなく一人暮らしの彼をとりまく人々の交流を描いた物語だ。

 いくつかの些細な出来事が積み重ねられていく。仕事仲間との喧嘩、息子との再会、美しい人妻との交流等々、小さなエピソードの一つ一つが丹念にリズムよく並べられ、見るものの気持ちを引きつける。

 監督は『クレイマー、クレイマー』('79)などを撮ったロバート・ベントン。元々雑誌記者から脚本家になった人で、有名な『俺たちに明日はない』('67)なども書いている実力派だ。映像で奇をてらうことはしない演出で、ストレートに演技とセリフで見せていくのが持ち味だが、決して湿っぽく重くならず、事柄を端的に描いていくのが気持ちいい。

 またそのツボにピタリとはまった出演者たちが実に生き生きと輝いている。旦那の浮気にやきもきするメラニー・グリフィスの、ちょっと所帯じみた姿が何とも色っぽく魅力的だし、これが遺作となったジェシカ・タンディは大家の老女役を気高く演じている。そしてノークレジットだがブルース・ウイリスが、女にルーズな旦那を好演している。

 そして何よりポール・ニューマンが、「年齢相応の達観」とか「人生の重み」などからはほど遠い、 人間くさい普通の老人を等身大で演じるのが素晴らしい。放ったらかしにした息子と偶然再会しよりを戻していく中、時には卑わいなセリフを交えながらも和んでいく姿は、円熟でありながらも年齢を感じさせない軽やかさを兼ね備えた演技だ。旦那の浮気にたまりかねたM・グリフィスがニューマンと駆け落ちしようとするシーンで、車の中で思わず涙ぐんでしまう彼女に対して「本気にしてしまった」とキスをかわすニューマンが見事に収まっている。程々の猥雑さすら含みながらもあくまで人間的な感覚に密着したところで作品を構築していく、このような映画こそ叙情的と呼ばれるにふさわしい。そしてニューマンも自分らしいスタンスで役を飄々とこなして、ハリウッドの大スターの面目躍如たるところなのである。

                   1997年3月29日




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