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改訂 1997/12/8
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銀幕のいぶし銀・第45回

『小さな赤いビー玉』


('75/フランス)

監督:ジャック・ドワイヨン

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 当時の大ベストセラーを記録した小説の映画化『小さな赤いビー玉』の主役は子供達である。以前も『どこまでもいこう』という傑作子供映画を取り上げたことがあるが、この『小さな赤いビー玉』は、子供を描いた映画を代表する紛れもない傑作なのである。


 第2次世界大戦さなかのフランス。ナチス・ドイツの占領地区ではユダヤ人迫害の手が日に日に強くなっていく中、ユダヤの血を引く兄弟がドイツ軍を逃れて南仏へ転々と逃げ続ける。家族との別離と再会、地方での苦しい生活や初恋を経て戦争が終結するまでを描く物語なのであるが、この映画の特色は物語というよりも、徹底して子供の目線から、戦争状況という厳しい現実に置かれた子供の世界を描き出していくところにある。


 子供の映画がなぜ我々の興味を引きつけるのであろうか。子供にとって世界とは、未知で不可解な領域が数知れず存在する空間である。子供にとっては戦争も恋愛も生死も、全てが等価に未知なる空間の先にある。そんな中子供が何らかのアクションを起こす度、その一々が未知の空間への働きかけとなり、そのアクションの一つ一つはすなわち冒険となるのである。


 もちろんこの映画は戦時中の物語であるから子供達に与えられる状況も過酷な訳だが、それもより正確に言うと、戦争によって怒ったり傷ついたりしている周りの大人が、彼らに影響を与えているのである。つまりこの映画では、子供というのは大人とは根本的に違う世界を持っていて、両者は相互に影響を与えあいながら並立している。その事実を何の衒いもなく、極めて繊細かつ冷静な視線で、キャメラがシンプルに見つめ続けていくのである。


 監督のジャック・ドワイヨンは、フランスではヌーヴェルヴァーグ以降の世代の特徴を最もよく引き受けた監督である。80年代には『ラ・ピラート』を頂点とする傑作群で、若者達の愛のディスコミュニケーションを鮮烈に描き、近作『ポネット』では、4歳の女の子が死んだ母親を捜し求めるという物語の中に親子のコミュニケーションの姿を見いだして、フランスのみならず日本でも大ヒットを記録した。


 彼の映画では恋愛でも親子愛でも一貫して、過剰なパッションを戦わせ続ける登場人物が錯綜し、その結果互いが高まりあい傷つけあう様が、極めて繊細かつ残酷に描かれていくのであるが、その演出はすでに『小さな赤いビー玉』から集約されていたのである。







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