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改訂 1997/12/8
移設 1999/4/29

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銀幕のいぶし銀・第42回

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」

('99/ドイツ・アメリカ・フランス・キューバ)

監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:コンパイ・セグンド、ライ・クーダー、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのミュージシャン達

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 30年以上も昔キューバ音楽で一世を風靡したものの、今は忘れ去られた音楽家たちがいる。アメリカのミュージシャン、ライ・クーダーは彼らの演奏をレコードで聴き、これぞ「魂の音楽」と老演奏家を見つけ出す旅にでる。時間をかけてキューバ中を探し歩き、一人、また一人とメンバーの消息を訪ねると、かつての演奏家達はちりぢりになってキューバのあちこちにひっそり生きていたのであった。彼らを再び音楽の世界へ呼び戻すライ・クーダーの努力の甲斐あって、素晴らしい音楽が奇跡のように甦ってくる。インパクトは強いが気品があり、決して押しつけがましくない演奏は本当に天性のエンターテイナーとしか思えないのである。

 彼らのアルバムは再びヒットを飛ばし、コンサートには熱狂的なファンが押し寄せる。この映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は、80〜90歳になろうとするそんな古老たちが再び脚光を浴び、栄光をつかむまでのドキュメンタリー映画なのである。

 監督のヴィム・ヴェンダースはあの「パリ・テキサス」や「ベルリン・天使の詩」の監督である。ロード・ムービーというジャンルを確立した彼はまた、優れたドキュメンタリー映画作家でもあり、映画監督・小津安二郎をテーマにした「東京画」、ファッションデザイナーのヨウジ・ヤマモトにまつわる映画「都市とモードのビデオノート」など、独特の視点を持ったドキュメンタリーを作り続けている。そんな彼が、長年の友人であるライ・クーダーの勧めからキューバ音楽に心酔し、作り上げたのがこの映画だという。実際、老演奏家達のパワーと愛情あふれるライブ・パフォーマンスの決定的瞬間を、見事なキャメラワークで画面に収めることに成功しているのである。

 そしてこの映画は非常にシンプルに、ただひたすら素晴らしい演奏を聴かせることのみに徹している。彼らが現実社会で苦労してきたという物語は、ほんの少しインタビューの合間に見え隠れするだけで、映画の大部分を占める彼らの演奏シーンに観客はただ圧倒され続けるだけなのである。その音楽を聴くだけで彼らのすべてが表現され尽くされている、というこれはヴェンダースの確信である。つまり、古老達の顔、その皺の一つ一つが文字通り歴史なのである。

 又ブランクと年齢を全く感じさせないエンターテイナーぶりはどうだ。ちょっとした仕草で客を盛り上げ、その演奏には一点の曇りもなく本当に楽しそうに音楽と戯れている感覚なのである。これこそが才能というものであろう。そして最後には、彼らキューバ人の誇りにヴェンダース自身の映画人としての誇りが感動的に同調するのである。

 この映画は単館ロードショウとしては記録的な大ヒットになっている。非常に納得のいく話である。





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