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銀幕のいぶし銀・第40回

『トゥルー・クライム』

('99・アメリカ)

監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ジェームス・ウッズ

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昨年のアメリカ映画は、コメディの『メリーに首ったけ』やアクションでは『マトリックス』など、伝統的ジャンル映画を一層進化=深化させた傑作が目に付く。久しぶりにアメリカ映画の底力を感じさせる一年だったといえよう。

昨年末から公開が始まったクリント・イーストウッド久々の監督・主演作『トゥルー・クライム』は、そんな一年間の締めくくりにふさわしく、犯罪サスペンス映画というジャンル映画の枠組みを、より高い次元にまで引き上げてしまった。人間にとっての「正義」の意味を問われている傑作なのである。

今回のイーストウッドは、女にだらしない新聞記者である。死刑を目前にした殺人犯の取材をするうち、彼の冤罪を確信したイーストウッドが、持ち前の直感と行動力を発揮して、真犯人を探し出していく。死刑執行を数時間後に控え、果たして彼を救うことができるのか……という物語は、まさにかつての大ヒットシリーズ「ダーティー・ハリー」のモチーフであり、マグナムこそ持たないもののイーストウッドの痛快な大活躍ぶりも、あれから20年以上の年月が経っているとは思えないほど若く男らしい。

だが「ダーティー・ハリー」とは決定的に異なる点がある。今回の『トゥルー・クライム』は、イーストウッドはもはや単に正義に生きるヒーローではなく、正義に生きていくしかない男の皮肉まじりの人生の物語なのである。映画では様々な人間模様・家族の描写に力点が置かれている。イーストウッドも家庭内では調和を乱す駄目亭主であるし、一方冤罪で投獄されている若い黒人は、手錠をはめられていても愛と信念を持って妻や娘に接している。また真犯人にも家庭があり、母親は貧困社会に生きる現実をこぼしていく。拘置所の所長は法律を守ることの矛盾をかみしめている。登場する男達はそれぞれに野心や欲望を持っていたり、愛情や守るものを持っていたりするのである。そういったテーマの一つ一つが重層的に絡み合って一つの大きな物語に積みあがっていき、しかもそれらはエンターテインメントとしての枠組みを崩すことなく、映画は最良のハッピーエンドと同時に最高に皮肉な結末を迎えるのである。この見事な矛盾と完結ぶり、これこそ娯楽映画の醍醐味なのであり、イーストウッドの人間観察力の鋭さを的確に表現しているといえよう。





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