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銀幕のいぶし銀・第38回

『どこまでもいこう』

(`99・日本)

監督:塩田明彦

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 子供をテーマに扱った映画は、洋の東西を問わず今まで数多く存在するわけだが、観るたびに非常な難しさを実感するのである。子供の行動論理は大人とはまったく違う。まして、子供の成長スピードは大人が想像するよりもはるかに速く、僅かな間で劇的な変化を起こしてしまうものなのである。単に「大人から見た子供像」ではなく、真に子供をリアリティを持って描こうと思えば、相当の慎重さが要求されるものなのだ。

 しかし考えて見れば、人間とは不思議なもので、どんな人でも子供の時代があったにもかかわらず、ほとんどの人がその頃のことを記憶していない。残っているのは断片的な思い出やエピソードにすぎず、子供の頃どんなことを考え、何を感じていたかは、すっかり忘却のかなたにある。子供を扱った映画が人々に共感を与えるのは、そういった忘却のかなたにある「子供の心」を、映画の中に垣間見れるからに他ならず、そういう意味では今回取り上げる『どこまでもいこう』は、間違いなく今の日本の子供の実像をつぶさに描き出すのに成功しており、子供を描いた映画の中でも近年まれに見る傑作の一本なのである。

 郊外にあるニュータウンの一角が物語の舞台となる。小学校の悪ガキコンビが5年生になり、クラス替えの場面から始まるのだが、この10歳という年齢に差し掛かる年代は、少しずつ「自分」が目覚め始める時期であり、子供を描く上で最もナイーブな時期でもある。そんな時期にさしかかる2人の少年の日常生活を、一つ一つのエピソードに丁寧にこだわりながら、物語は鮮やかにまとめあげていくのである。例えば、隣の団地に住む女の子のことが気になる。クラスにちょっと不思議な雰囲気の男子がいる。これらはみな、「自分」と「他者」という意識の芽生えであり、様々な悲喜劇の始まりなのである。そして二人の周りで様々な出来事が起こった挙げ句、各々はそれぞれ自分を確立していく。過去の自分と新たな自分の結節点が、見事に浮き彫りにされていくのである。

 今回が監督2本目となる塩田明彦は、アマチュア時代から映画的才能を高く評価されてきた逸材で、処女作の『月光の囁き』では、高校生の許されざる純愛を谷崎潤一郎的強度においてギリギリまで追求したことで、高い評価を得ている。今回その才能が最も発揮されていると思えるのは、何といっても二人の主人公である少年の「顔」である。今の日本で、ここまで映画的に生き生きとした顔を持った少年を見つけ出すのは至難の業で、それだけでこの映画は成功を約束されているのである。






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