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銀幕のいぶし銀・第33回

『洗濯機は俺にまかせろ』

('99・日本)

監督:篠原哲雄
出演:筒井道隆、富田靖子、小林薫

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 『鉄道員(ぽっぽや)』が大ヒットしている。高倉健が久しぶりに主演した映画ということで、大人の鑑賞に堪えうる本格的な作品がしばらくぶりに日本映画に帰ってきた印象だ。又そんな映画がヒットするというのも邦画にとって素直に喜んでいい状況だろう。

 今回紹介する『洗濯機は俺にまかせろ』で強調すべきは、監督以下キャストも若手主体の若者向け作品ながら、珍しくしっかりと日本映画らしい作りで、しかもその人情味あふれる内容がちっとも古くささを感じさせないのである。そんな映画が、小規模公開ながらかなりのヒットを記録しているのが面白い。

 東京下町の商店街が舞台。洗濯機の修理屋をやっている若者(筒井道隆)と、その電気屋の娘で出戻りの美人DJ(富田靖子)の、真面目でちょっとぎこちない気持ちの交流を軸に、筒井に思いを寄せるパン屋の娘や、筒井の先輩で今は荒んだ生活をしているタクシー運転手(小林薫)など、商店街の様々な人間模様をからめた青春物語である。

 30才前後といえば、成功もすればそれなりに失敗も味わい、そうそう夢を追いかけるだけで生きてもいけず、だからといって生活に埋もれるには早すぎる、そんな節目の時期とも言える。その微妙な揺れる気持ちを繊細に描いているだけでなく、その下の世代と上の世代での様々な思いの変化、生活と夢とのギャップを丁寧に浮き彫りにしていく。そんなところが多くのお客の心をつかむのに違いない。

 筒井道隆は漫画家志望で上京したようだが、その方向にガムシャラに突き進むでもない。富田靖子も仕事が中々うまくいかないようである。そういった中途半端な状態を、二人とも自然体で演じられるのがいい。そして二人はそれぞれの夢を抱き続けながら心を交わしていくのが、折り目正しくきっちり描かれていくのである。

 監督篠原哲雄は、山崎まさよしの『月とキャベツ』が話題になった注目の若手であるが、イメージと音楽が印象的な前作に対して、今回は地道に生きていく若者たちを叙情豊かに描くことに成功している。これは演出の勝利でもある。

 この映画はこれから順次地方公開が控えているらしいが、最近とみにTVずれした映画が氾濫して、TVの映画化やアニメばかりが話題になる日本映画界で、このような地道な映画もしっかり存在していることにはもっと注目したほうが良いと思う。このみずみずしく端正な演出と、筒井・富田らのしっかりした演技が、一投足抜けて「いかにも映画らしい」位置を占めているのである。




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