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改訂 1997/12/8
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銀幕のいぶし銀・第31回

『永遠と一日』

('98、ギリシャ・フランス・イタリア)

監督;テオ・アンゲロプロス
出演;ブルーノ・ガンツ

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 昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドール(グランプリ)を獲得した、ギリシャを代表する映画監督テオ・アンゲロプロスの最新作がいよいよ公開されている。

 自らの死期を悟った詩人が、アルバニア難民の子供とともにその最後の一日を過ごす。今まで追求してきた詩の世界や家族との回想がないまぜになってパノラマのように甦り、その中にあふれる妻や母への慕情、詩と言葉の問題、国境と難民のテーマなど、多くの物語が錯綜し見事に結実している作品なのである。

 主役の詩人を演じるのは、『ベルリン・天使の詩』(監督ヴィム・ヴェンダース)での名演が忘れられないブルーノ・ガンツ。彼は70年代以降、ヴェンダースを始めとするニュー・ジャーマン・シネマの台頭を支えてきた重要な俳優の一人である。『ベルリン~』の時もそうだったが彼は基本的に非常に優しい人なのである。今回も全てのものを包み込むようなその優しい眼差しで、アンゲロプロスの作品世界を深めているのである。そんな彼と同行する少年は、本当のアルバニア難民の中からオーディションしたという。そんなキャスティングの妙も、この映画をより一層繊細なものにしているのであろう。

 実際この詩人の役どころは相当難しい。死期を悟っているだけでなく、自分のライフワークとも言える詩の研究も行き詰まりを見せたまま、かつて熱烈に愛し合っていた妻とも別れ、母親とは悲劇的に死別する。このように全てに閉塞した状況を迎えるとき、人はどのような表情を見せるものなのか?このナイーブで悲劇的な局面で、ブルーノ・ガンツはただ微笑んで見せるのである。最後、難民の子供が密航船に乗り込んで最後の別れを告げたあと、彼は無表情のまま涙をあふれさせるのである。

 そしてアンゲロプロス監督は、『旅芸人の記録』『アレクサンダー大王』などギリシャやバルカンの歴史と紛争に深く根差したテーマの作品も作っているが、『蜂の旅人』や最近の『ユリシーズの瞳』など、個人の時間の流れの中で愛情や国境のテーマが浮かび上がってくるものを、どれも具体的な舞台としてギリシャとバルカン半島を選び、類い稀なワンシーンワンカット・心象イメージ・時間の交錯を駆使して描いているのである。コソボ問題で今まさに衆目を集めているバルカンだが、ここが抱える歴史的問題を映画からどうアプローチ出来るか、アンゲロプロスは常に強烈に意識しているのである。




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