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「銀幕のいぶし銀」第3回

「ジャン・ルノワール、
    映画のすべて。」

  (96/11/5〜97/2/1、東京・京橋のフィルムセンターによる、監督ジャン・ルノワール回顧展によせて)

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 新年を飾るに相応しい映画的慶事として、是非とも紹介しなければならない事がある。現在、東京・京橋のフィルムセンターで「ジャン・ルノワール、映画のすべて。」という特別企画が催されているが、これが凄い。映画監督ジャン・ルノワールの上映可能な全作品に関連作品を加えた全44作品を一挙に上映するという、世界でも例を見ない大規模な回顧展なのである。

 ジャン・ルノワールという名前に聞き覚えのない方でも、『ゲームの規則』『素晴らしき放浪者』『大いなる幻影』『どん底』『草の上の昼食』『フレンチ・カンカン』『黄金の馬車』などと聞くと、そうかと思われるに違いない。著名な印象派の画家オーギュスト・ルノワールの息子としてモンマルトルに生まれ、サイレント時代から60年代に到るまで生き生きとした人間描写と自然賛美で人生を謳歌する傑作を撮り続け、ミシェル・シモン、ジャン・ギャバン、シモーヌ・シモン、アンナ・マニャーニ、フランソワーズ・アルヌール、イングリッド・バーグマンらの名演を生み出し、フランス・ヌーヴェルヴァーグの監督たちから「親父さん」と敬愛された、世界で最も素晴らしい映画作家の一人である。

 ジャン・ルノワール映画の魅力は、人間の自由さ大らかさを、途方もなく殆ど極限まで肯定しているところにある。それも「人と人との連帯」「人間讃歌」などとあっさり言ってしまうのが思わずためらわれるほどなのだ。かつて日本でも一世を風靡した『大いなる幻影』も今見直すと、フランス兵の捕虜が如何に脱走するかという話だけにとどまらず、ジャン・ギャバンらの生き生きとした捕虜生活(女装ショーまである!)、ドイツ側の将校(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)の並外れた礼儀正しさ、ギャバンの逃亡を助けるドイツの農婦(ディタ・パルロ)の可愛らしさ、この余裕綽々な登場人物たちの姿が素晴らしい。ルノワールにかかってしまえば、どんな俳優でも役どころを遥かに上回る存在感を十二分に発揮する。『ゲームの規則』の、お祭り騒ぎが加速して廊下を慌ただしく駆けめぐる集団、『黄金の馬車』のアンナ・マニャーニの一座の舞台、『草の上の昼食』の大嵐とハチャメチャな騒動、どのルノワール映画にも非常に大きな包容力と寛容さが満ちていて、これこそ今の映画ではなかなかお目にかかれない美しさだ。かつてルノワール映画を見た方もそうでない方も、二月一日までやっているのでこの機会に是非見直して、感動を分かち合っていただきたいのである。

                      96/12/17





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