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改訂 1997/12/8
移設 1999/4/29

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銀幕のいぶし銀・第29回

『のど自慢』

(99、シネカノン・東宝など)

監督;井筒和幸

出演;室井滋、大友康平、小林稔侍、尾藤イサオ、伊藤歩、松田美由紀、竹中直人、北村和夫、坂本冬美、大川栄策、金子辰雄

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 タイトルからしてそのものズバリの、NHKの看板番組をテーマにした映画が今公開されている。「のど自慢」出演を目指す人々の笑いと涙にあふれたバックストーリーを、楽しく描いた映画である。近年のカラオケブームのせいか、出場希望者がこのところまた増えてきているらしく、特に地方の中規模都市では人気が高いそうだ。4000人からの応募者の中から20組が選ばれていく様子や、事前の調査、審査の様子など、普段見慣れているこの番組の舞台裏も楽しめる趣向になっている。

 登場する主人公達はみな、ごく真面目に生きている人々ばかりである。いくら頑張っても売れない演歌歌手は、自分の歌に自信を失いかけているし、あるお父さんは仕事に失敗ばかりしているが、いつもガッツとファイトに燃えている。ほかにも家庭がうまくいっていない女子高生やタクシー運転手など、各々の生活は決して順風満帆といえないのだが、そんな人々が日々奮闘しながら歌を目指し、そして一日限りの晴れ舞台で尽きぬ思いを込めて熱唱する。時間にすればほんの数分でも、実は生涯で一番輝いている瞬間であり、それを映画は熱いエールを込めて丁寧にとらえていく。

 「人生頑張れば大丈夫」という大らかな肯定に満ちた作品であり、そういう意味でこの映画は極めて健全な、まさに老若男女が等しく楽しめる映画なのだ。題材からしても国民映画と呼んでおかしくないのだが、このような「みんなで楽しめる映画」というのは、アニメを除けば実は今の日本映画で一番欠けているジャンルなのである。「男はつらいよ」シリーズが終了してからというもの、世代の断絶も極まったこの時代に、そういう国民映画はもはやなくなったかと思っていたが、この日本人なら誰でも知っている題材で甦ってきたかのようである。

 そして勿論、歌うシーンが素晴らしい。どの歌をとってもいい選曲だが、それらを歌う人々もじつにいい。思いがこもった歌を歌いあげるというのは、それだけでいやなことやモヤモヤした気分を吹っ飛ばし、気持ちを盛り上げ、問答無用に感動的なのである。映画にとって歌は切ってもきれない関係にあるのだが、ハリウッド映画などに対し、日本映画では最近楽しい歌の映画がなかった。映画に歌の魅力を導入していく新しい形として、このような日本独自のパターンがあるのも注目である。つまり自分たちで歌う魅力、その魅力を十分知っているのがまさしく今の日本人なのである。




[ 銀幕のいぶし銀:目次 ]

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