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改訂 1997/12/8
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銀幕のいぶし銀・第25回

『がんばっていきまっしょい』

('98・東映)

監督;磯村一路
主演;田中麗奈、清水真美、葵若菜、真野きりな、久積絵夢

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 これぞ青春映画、と呼びたくなるような爽やかさである。『がんばっていきまっしょい』は、22年前の四国・松山を舞台に、ボートにかける5人の少女たちの、一途な物語である。

 ボートに魅せられた少女が、高校入学と同時に女子ボート部を作り、様々な奮闘を繰り広げながらすこしづつ成長していく姿を、美しい瀬戸内をバックにじっくりと描いていく。舞台となる高校で、ことあるごとに送られる伝統のエールが「がんばって、いきまーっしょい!」という独特の掛け声なのだが、入学時にはこれに少なからず驚かされた主人公たちも、いつしか自分たちでこのエールを送って励ましあうようになる。それ程にこの言葉は大きな意味を持っているのだ。

 この映画が非常に成功していると思うのは、とにかくただひたすらボートの練習をやっているのである。といっても凡百のスポ根ものにありがちな、汗と涙、とか、血みどろの特訓、などといったドラマ性はあえて盛り込んでいない。この映画では、多分本当にボートなど経験したことない女の子たちをオーディションで選び、実際にボートの訓練をさせていく過程で自然にわき起こってくる感情をすくい取っていく。それを女子ボート部員の役どころに一致させ、雑談や日常のしぐさに表れるちょっとした変化を大切に見せることで、ボートが日常、日常がボートという役柄と実際を重ね合わせていく。それが、このかけがえのない成長の物語をリアルに作り上げているのだ。実際初めてのボート試合の時とクライマックスの試合では、あからさまに5人の表情が鍛えられているのである。若い元気な女の子達が、ワイワイ騒ぎながらひたすらボートを漕ぐ、その頑張っている姿を見るだけで、凝った物語がなくとも十分映画は感動的になるという好例である。

 ボートに全てを賭ける、ボートが日常と一体化する、このような濃密な体験はまさしく若いころのかけがえのない財産である。だれしも自らの若いころを振り返ればこのことに納得するだろうが、この体験をシンプルにストレートに描きだしていく監督の磯村一路は、相当の腕前の持ち主と見た。考えてみれば大抵のことは努力せずとも手に入る現代で、「頑張る」などという価値観はますます薄れているのかもしれないが、だからこそこの無我夢中さ、このボートの漕ぎっぷりは大切にしなければならないと思うのである。

(インターネットで、彼女達の奮闘ぶりが見られる。「がんばっていきまっしょい!」の掛声も聞け、これが実にいい味を出している)






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