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改訂 1997/12/8
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銀幕のいぶし銀・第16回

『世界中がアイ・ラヴ・ユー』

脚本・監督 ウディ・アレン
出演;ウディ・アレン、ゴールディ・ホーン、ジュリア・ロバーツ、ティム・ロス、ドリュー・バリモア

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 かつてのハリウッド映画を代表するものにミュージカルがある。主人公たちが恋の悩みや内面の思いを歌い上げ、踊りを披露することで、ある映画的なおとぎ話を紡ぎだしていく手法は、フレッド・アステアやジーン・ケリーらのスターと共に発達し、最も映画らしい映画の一ジャンルとしてハリウッドならではの豪華絢爛さを競っていたものだ。

 伝統的ハリウッド映画の退潮とともにミュージカルも急速にすたれていくのだが、そんなミュージカルを突然現代に呼び戻したような作品が現れた。
 『世界中がアイ・ラヴ・ユー』。ウディ・アレンの監督作品である。

 ウディ・アレンといえば、そもそも伝統的ハリウッド映画に反発し、ニューヨークを起点に独自の映画的スタンスを貫いている作家として有名で、そんな彼が忠実に正統派のミュージカルを生み出してしまう状況はある意味興味深いところだ。懐古趣味的な映画へのオマージュを越えて、彼自身の映画への確信を感じさせるのである。

 物語自体はミュージカルらしく恋愛にまつわるドタバタ喜劇で、ニューヨークでリッチな生活をしている家族たちの、母や娘やその友人らを巻き込んだ恋愛騒動である。いってみればそんなたわいもない話でも、冒頭から主人公たちが恋の歌を歌い始めると、リズムに合わせてショーウインドウのマネキンが踊りだす、などといった趣向が見事にミュージカルの典型にはまっていて、おとぎ話的恋愛コメディの扉を一気に開いていくのには感心させられる。

 その世界は勿論豪華な出演者に支えられている部分も大きいのだが、実は、基本的に今までのウディ・アレンの作品と変わることはない。神経症的にナーバスになっている人々が繰り広げるコメディ、ということでは彼の初期の作品から一貫して続いているテーマであり、最初の頃はニューヨークという大都会を舞台に生きる人々を戯画化して毒のある笑いを中心に成立していたのが、だんだんと、微妙な心理の揺れをじっくり描き出す作品へと変化していき、遂にはこの映画へと向かっていったのだ。

 映画的伝統から離れた作家がまた王道に帰ってくる、これは間違いなく、ウディ・アレン自身が完成の域に達しようとしているのであり、演出技法や演技も含めこの映画はスタイリッシュというよりむしろ「枯れた」境地に向かっている。それはウディ・アレンも今や還暦を過ぎたことと、まんざら関係のないことでもないであろう。





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