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銀幕のいぶし銀・第129回

『天然コケッコー』

(2007年・121分)

監督:山下敦弘
出演:夏帆、岡田将生、夏川結衣、佐藤浩市

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 今の日本映画界で最も注目を集める若手監督の一人である山下敦弘だが、この最新作『天然コケッコー』は前作『松ヶ根乱射事件』と全く反対の、実にさわやかな青春映画の傑作として多くの映画ファンを魅了するに違いない、そんな潜在力を感じさせる美しい映画である。くらもちふさこの同名の原作漫画は以前から人気の高かったものだが、筋らしい筋のない展開に映画化は難しいと思われていたのを、原作の持ち味である絶妙な空気感を生かしながらこれほど感動的なまでに美しい映画にまとめあげられるとは、山下敦弘の演出力がまた一段と増してきている証左であるといえよう。


 島根のど田舎の村、全校生徒が小学生と中学生合わせて6人しかいない学校で、中2の一番お姉さん・そよちゃん(夏帆)は自然の中でのどかに暮らしていた。そこに東京からイケメンの同級の男子・大沢くん(岡田将生)が転校してきたところから物語が始まるのだが、そよちゃんは初めての同い年の男子に心ときめかされるも、田舎暮らしになじめない大沢くんとは中々気持ちが通じ合わない。そよちゃんと周りの友達との関係も微妙に変化をきたし、その度に落ち込んだり元気を取り戻したり、一方で今まで気づかなかった大人たちの悩みや交錯する思いもかいま見ながら、そよちゃんは学校生活を過ごしていく。夏の海水浴、秋祭り、バレンタインデー、修学旅行といった節目節目で思いに揺れるそよちゃんと大沢くんの不器用な初恋を軸に、お互いの家族や友人たちをも巻き込んだ様々なエピソードを丁寧に綴っていきながら、二人が高校に進学するまでの時間をゆったりと濃密に描いていくのである。


 多くの日本の大人にとって、このような青春物語は理想的原体験というべきものかもしれないし、一方では極端に牧歌的な典型像だと思われるかもしれないが、それが単なる絵空事でなく強烈な映画的リアリティを持って確立されているのは特筆すべきである。その一番の要因として、何といっても主演の夏帆の素晴らしさを挙げないわけにいかない。彼女ははなから演技などしていない、まさにそよちゃんという女の子をそのまま「生きて」いるのである。これは彼女の天性の物としか思えないのだが、監督の演出も的を射たもので、素直に彼女の魅力をすくい取ってスクリーンに埋め込んでいくような、極めて効果的なスタイルをしっかり貫いているのが、日本映画らしい慎ましやかな美徳のお手本とすら言っていいのである。





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