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銀幕のいぶし銀・第128回

『しゃべれどもしゃべれども』

(2007年・109分)

監督:平山秀幸
出演:国分太一、香里奈,八千草薫、伊東四朗

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 「一瞬の風になれ」が今話題の作家・佐藤多佳子の傑作青春小説を、人間ドラマを描くのに定評のある平山秀幸監督によって映画化した話題作が『しゃべれどもしゃべれども』である。これはいかにも日本映画の良心的な作品として丁寧にまとまった一本といえよう。


 国分太一扮するのは中々うだつの上がらない二つ目の落語家・三つ葉であるが、周りの仲間達が新作落語などに手を出していく中にあっても本人は古典一筋、着物を常に身に付け何とかしっかりした芸を確立したいという思いで一所懸命に師匠に学んでいる身分である。師匠につれられて行った話し方教室で、三つ葉は香里奈扮する生徒・五月に出会うが、この五月がまた美しい容姿に似合わぬぶっきらぼうな態度で三つ葉を憤慨させる。それでも三つ葉の高座を見に来た五月は、三つ葉に話し方を教えてほしいと言い出すのである。


 他にも、大阪から転校してきたばかりで学校になじめない親戚の小学生や、元プロ野球選手で解説番組がうまく出来ない無骨な男が集まり、三つ葉の教室が開かれていく。自分を変えたいと思う話べたな人間たちの物語が進展するにつれて明らかになっていくのは、各々が地道に生きるなかでうまくいかない事にぶつかりながらも何とかそれを乗り越えようとする前向きな力、翻って三つ葉自身に問われるのは、自らにとっての落語とは何か、10年も修行しながら一向に将来の見えない状況で今後どうするのか、という大きな命題である。


 そんな中で三つ葉は師匠の十八番である演目「火焔太鼓」をさせてもらえる事になるのだが、映画上で最も鍵になる国分太一のこの火焔太鼓が中々素晴らしい熱演なのである。ストレートな青春映画である以上、クライマックスの火焔太鼓で本気に観客を魅了させないと物語が成立しない訳だが、国分太一はその演出的な狙いに見事に答え、観客をぐいぐい引きつける力強い落語が出来上がっているのである。こういう点に、久しぶりに正統的な日本映画の演出手法を見いだせるのであって、単に出演者の人気に寄りかかるのでない、本当に役者として役を演じきる、という快感がこの映画の信条なのである。目先の笑いや映像のテクニックなどによらない、「日本映画の良心」とはこのような地道な演出の積み重ねとそれに呼応する俳優の演技なのであり、このような手堅さを持った映画も今は意外に少なくなってきたのかもしれない。また映画館のスクリーンが、こういった手堅さの最も発揮できる空間として再認識できるいいきっかけを与えてもらえるのである。





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