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銀幕のいぶし銀・第126回

『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』

(2007年・144分)

監督:松岡錠司
出演:オダギリジョー、樹木希林、内田也哉子、松たか子、小林薫

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 去年のベストセラー小説で、テレビドラマ化も好評だったリリー・フランキーの自伝的物語が、現状ほぼベストといえる監督・キャストのコンビネーションで満を持して映画化される。


 奔放な芸術家肌の父親“オトン”(小林薫)とたくましく優しい母親“オカン”(内田也哉子 ・樹木希林)に育てられ、筑豊の炭坑町からささやかな夢を抱いて上京してきた“ボク”(オダギリジョー)は、東京の享楽的な生活に流され、ダラダラと学生時代を過ごした挙げ句、ちゃんと就職もせずに借金を重ねる生活になっていた。何も知らずに仕送りを続ける“オカン”には本当の事を告げられないまま、ついに住処を追われるに至って、“ボク”は一念発起、必死でどんな仕事も引き受けるようになり、何とか生活は建て直していくのだが、今度は“オカン”がガンで入院する事になる。それでも一人で頑張っている“オカン”を見るに見かね、東京に呼び寄せて共同生活を始める“ボク”。改めてスタートを切った家族生活を十分楽しむ間もなく、“オカン”のガンは再発し非常に苦しい闘病生活を余儀なくされ、苦労の甲斐なく他界してしまうが、人生の最後の時を“オカン”と共有できた“ボク”は、母親の無償の愛情にただひたすら心動かされ続けるのである。このような物語が多くの人の心を揺さぶったのは、母と子という普遍的なテーマを実に真摯に綴っていったからであり、映画化にあたってもこの点には特別な配慮を持って描かれている。幼少期の炭坑町での生活は昭和という時代の断面を利用しつつ、東京での生活は平成の様々な時代背景も緻密に描き、この一家族の堂々たる半生記を映画らしいスケール感で構築しているのだ。


 若い頃の内田也哉子、後年になって樹木希林という実際の母子で演じる“オカン”も勿論素晴らしいのだが、この映画で注目すべきは“ボク”のオダギリジョーの入魂の演技である。野暮ったく、時に人目も憚らぬ泣きの芝居をストレートに表現しながら、周りに常に仲間達が集ってくるような魅力を放つ人物像を、これほどしっかりと作れる俳優だったのだと改めて感じさせる名演といえよう。そしてやはり松岡錠司の演出だが、いつになくクールで上品なのである。例えば“ボク”の仕事について、結構猥雑な仕事もこなしているようであるが、そういう部分は物語上不必要にクローズアップしないようにしつつも、一方で確実にスクリーンのそこかしこに埋め込んでいくような繊細さを見せているし、ストレートな大芝居の続く後半でも敢えて冷静に簡潔な演出を心がけているところなど、近年の日本映画には数少ない上品な魅力にあふれているのである。





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