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銀幕のいぶし銀・第119回

『LOFT ロフト』

(2005年・『LOFT』製作委員会・115分)

監督・脚本:黒沢清
出演:中谷美紀・豊川悦司・西島秀俊・安達祐実・鈴木砂羽・加藤晴彦・大杉漣

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 いまや世界の映画祭において「クロサワ」といえば「アキラ」ではなく「キヨシ」なのである。それほどまでに世界レベルで注目を集めている黒沢清のおよそ三年ぶりとなる新作が遂にベールを脱いだ。今回紹介する『LOFT ロフト』は、いわゆるホラー映画というジャンルの定義そのものに挑戦するような革新的な作品として、既に多くの批評家から様々な論調を巻き起こしているが、その奔放なストリーテリングの手法は、常に新しい表現にチャレンジする黒沢監督の意気込みを十二分に発揮していると言えるだろう。


 中谷美紀は将来を期待される新進小説家である。新作の執筆を依頼されているが思うように筆が進まず、心機一転するため郊外の一軒家に居を移すが、森の中のその一軒家では様々な怪異な出来事が巻き起こってくる。一方その建物の横では、大学教授の豊川悦司が、千年前のミイラの研究に没頭しているが、不思議なきっかけで彼の研究を知った中谷はミイラの実物と出会い、言いしれぬ興味を覚えていく。そして、とりつかれたように研究を進める豊川自身にも惹かれていくようになるのである。


 古代から甦ったミイラが人間を襲う、式の単純なジャンル映画ならば今までに数多く存在するのだが、この映画において黒沢清が思考を巡らせる出発点は、そもそも映画にとってミイラとは何か、という根元的なテーマの模索である。古代のミイラが人間の永遠の生命・永遠の美の希求によって生み出された存在であるところに注目した上で、それらはすなわち「永遠の愛」の希求につながる、というところまで掘り下げを行った結果、この作品は単なるホラー映画というジャンルを揺るがすだけでなく、映画においては、永遠の愛を求める人間の欲望こそがホラーの原点となるのであり、それ故に究極の恋愛映画はホラー映画の延長線上に位置する、という大胆なテーゼを実践するに至っているのである。


 実際中谷と豊川は様々な恐怖体験を共有することによって惹かれ合う関係になるのだが、人間がある物事に取り付かれていく様子ーそれが仕事であれ、ミイラであれ、愛情であれーをひっくるめて、人間の愛というものこそが恐怖そのものであるという状況は、確かにある種の真実をはらんでいるのであり、その部分を明示的に描き出していく黒沢清の映画作りも又、人間存在の根幹に迫っているといえる。そしてこれこそ、黒沢清の新作が常に世界の注目を浴びる原点であるといえよう。





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