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銀幕のいぶし銀・第113回

『ブロークバック・マウンテン』

(2005年・アメリカ・134分)

監督:アン・リー
出演:ヒース・レジャー 、ジェイク・ギレンホール 、ミシェル・ウィリアムズ 、アン・ハサウェイ 、ランディ・クエイド

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 この号が発行される頃には既に結果が発表されているはずだが、今回アカデミー賞の最有力候補と目され、昨年のヴェネチア国際映画祭で最高の金獅子賞を受賞したのがこの『ブロークバック・マウンテン』である。60〜70年代、男同士の純愛を描くこの作品がはたして保守的な傾向の強いアカデミー賞でどう評価されるのかが注目点であるが、大胆なタブーに触れるという点では前回紹介した『シリアナ』に匹敵する話題性の強い映画であるのは間違いない。


 物語は、二人の朴訥な若いカウボーイの出会いから始まる。仕事を求めていた二人は、ある夏の1ヶ月間ほど羊番の仕事を請け負うことになった。山の中で二人きりの生活が始まり、初めこそ殆ど言葉も交わさぬ間柄だったが、雄大な山の麓で毎日羊の群れと格闘するうちに二人は打ち解け合い、そしてある日一線を越えてしまうのである。同性愛に対して偏見の目が強かった時代であり、彼ら自身も自らの行いに対して戸惑いを隠せないでいるが、世間と全く隔絶された山の中では誰に恥じることもない。素直な気持ちで日々を送れることに限りない開放感を覚える二人なのである。やがて夏の仕事が終わり、二人は各々の日常生活に戻る。普通に恋人を作り、結婚して子供をもうけても、心のどこかが満たされない二人は隙を見て会い続けているが、そんな逢瀬が20年近く続くうち、家族や世間の目が少しずつ彼らの関係をゆがめ、苦しめていくのである。


 堂々たる純愛映画なのであるが、この映画が興味深いのはそんな男たちの禁じられた関係を、意外なほど大らかにかつ淡々と描いているところであろう。物語の時代性に加え、カウボーイの集まるワイオミング特有のものなのか、開放的なのんびりした空気が映画中に満ちているのである。二人の男は出会う度に本当に無邪気な遊びを繰り広げ、喜びのあまり臆面もなく抱き合いもする。周りの人々もそんな二人に驚かされることがたまにあっても、あくまで毎日の生活に追われる日々が過ぎていく。二人の心に秘めた思いも深く重いものがあるが、各々の妻さらに子どもたちの心の中にも重いものが蓄積され、遂に爆発していくまでのスパンを、ただじっくりと見つめ続けることになるのである。あくまで押さえた演出がまるでドキュメンタリーのように、男の愛情はこういうものなのかと目の当たりに突きつけられるような作品なのである。





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