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銀幕のいぶし銀・第111回

『単騎、千里を走る。』

(2005年・中国・108分)

監督:張芸謀(チャン・イーモウ)
出演:高倉健、リー・ジャーミン、ヤン・ジェンボー、寺島しのぶ、中井貴一(声の出演)

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 『HERO』『LOVERS』の大ヒット2作品で今やハリウッドでもメジャー監督になった張芸謀が、久しぶりに原点に戻って骨太な人間ドラマを生み出した。しかも主演に高倉健を迎えているのである。何ともビッグな顔合わせの作品なのだが、高倉健も、主演作は『ホタル』以来実に5年ぶりとなり、久しぶりにスクリーンでその男らしい姿を見せてくれるのが嬉しい。


 事情があって息子と疎遠になっている頑固な父親が高倉健である。息子の中井貴一が病に倒れるところから物語は始まるのだが、その状況をそのままストレートにナレーションしてしまう導入部からして、もう張芸謀と高倉健の組み合わせでしか考えられない直球勝負であり、冒頭からこの世界にどっぷり引き込まれていくのである。


 健さんは伝統の仮面劇をビデオに収めるという息子の願いを叶えるため、右も左も分からない中国に渡り、言葉の壁も乗り越えて、仮面劇を演じる男を捜す。そしてその男にまだ見ぬ息子がいることが分かると、男のために健さんは更に中国の内地へと向かい、子供を連れて男に会わせようとするのである。健さんの苦難の道程を、虚飾なくストレートに描くことで、男達や子供との言葉を越えた友情や愛情がひしひしと見る側に伝わってくる。健さんの押さえた表情が逆に雄弁に心理を物語るのである。


 デビュー作『紅いコーリャン』から既に、一本気な男の生き様を描いてきた張芸謀だが、『初恋のきた道』では若きチャン・ツィイーの初々しい素朴な魅力を引き出すなど、純朴に生きる人間をストレートに力強く描く演出力には定評がある。そう考えると高倉健はまさに張芸謀作品にうってつけの俳優であり、張芸謀も健さんと一緒に映画を作るというところから今回の企画を立ち上げているほどである。それ故健さんはいつもの如く控えめな顔の表情だけで、いつもながら台詞なしに何もかも語ってしまう独特の芝居には敬服するしかない。


 張芸謀の人間ドラマの特徴として、俳優ではなく現地の素人を使いドキュメンタリー的なリアリティを出すという手法が度々用いられる。実は今回も、健さん以外はほぼ素人だったようなのだが、素人の放つリアリティと健さんの朴訥とした芝居のリアリティが、実は全く対極のものでありながら、その噛みあわなさをも逆に映画に取り込んでしまおうというのが張芸謀の隠れた意図なのである。ろくに言葉も通じない中国に独り飛び込んだ健さんの、何とも言えぬ不安はそうして醸し出されているのであり、男達が心を通わせるラストがそれ故に効いてくる。ストレートに描くということの演出的計算がきっちり出来るのが、張芸謀の持ち味であるといえよう。





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