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銀幕のいぶし銀・第109回

『TAKESHIS’』

(2005年・日本・107分)

監督:北野武
出演:ビートたけし、北野武、京野ことみ、岸本加世子、大杉漣、寺島進

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 秋の公開作品はやはり文芸作・芸術作が多くなるのであり、今年で言えば『春の雪』などが話題であるが、この『TAKESHIS’』は監督・北野武が『座頭市』以来2年ぶりに撮った最新作で、10年来温め続けていたというアイデアを元に作られた野心作である。今年のベネチア映画祭でサプライズ上映され、賛否両論を巻き起こした事も記憶に新しいが、なるほどそれだけの事はあると納得させられる異様な映画になっているのである。


 大スターであり映画監督までこなす売れっ子タレントの北野武と、いつまでたっても売れない役者でオーディション通いを続けているしがないコンビニ店員のビートたけしが一人二役を演じている。たまたまそっくりなこの二人がテレビ局で偶然巡り会ったところから、お互いの立場が少しずつ入り交じり、互いに夢や妄想がじわじわと浸食されていく。ついには現実と夢想の境界も曖昧になり、イメージの世界が映画を覆い尽くしていく様を、殆ど物語としては語らず妄想を妄想のまま表現しようとしていくところが、最近の日本映画としては非常に大胆な構成であるといえよう。北野映画の集大成という触れ込みはある意味正しくて、銃の乱射や沖縄の風景など、今までの北野武の映画にしばしば登場するモチーフを極めて形式的に反復する事で成り立っているこの映画を見るためには、彼のこれまでの作品をある程度知っていないとそもそも楽しみようがない作りになっている。そのような意味でこの映画は観客を選ぶし、この敷居の高さこそが今回の監督の最大の狙いであるといえよう。


 監督12作目にしてこの作品とは、少なくとも北野武のフィルモグラフィの中では最大の結節点である事は間違いないのだが、監督自身がインタビューなどで語っているように、一見ランダムに思いつきを並べたように見える構成が実は周到に練られた物語であり、それを編集段階で順序を崩したりモンタージュを変える事によって、あえて表現をぼかしていくという方法論は、実は今までの北野映画の真逆を行っているのである。北野映画の最も素晴らしい持ち味であった、鮮烈で印象的なカットを断片的に繰り出していくあり方に対し、自らアンチテーゼを突きつけることによって新しい「何か」に脱皮しようとする試みなのである。これは相当パーソナルでしんどい作業ではあるが、今まで幾多の映画作家がこのような結節点を経て新しい次元に到達していったのであり、北野武も次のステップへ踏み出すための重要な通過儀礼をここで行っているのである。





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