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銀幕のいぶし銀・第104回

『チャレンジ・キッズ 未来に架ける子どもたち』

(2003年・アメリカ)

監督:ジェフリー・ブリッツ
出演: ハリー・アルトマン、アンジェラ・アルニバル、テッド・ブリハム

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 80年もの歴史を持ち、アメリカでは知らない者はないというイベント「全米スペル暗記大会」。全国の地区予選を勝ち抜いた200人以上の子どもたちがワシントンDCに集結し、聞いたこともないような難しい単語のスペルを間違いなく言い当てる。ただ一文字でも間違えればその瞬間に失格という、実に単純にして緊張感溢れる戦いは、毎年テレビ中継されるほどの人気である。その魅力に憑かれ、舞台裏に迫りたいと考えた無名の新人監督が、まさに独力で全米を渡り歩いて子どもたちに取材し、スペル大会に賭ける彼らの意気込みや地道な努力、そして緊迫した大会の様子などをドキュメンタリー映画にまとめ上げたところ、瞬く間に全米の話題をさらい異例の大ヒットを記録したのがこの映画なのである。


 容易に想像できるように、スペル大会に挑む子どもたちの払う努力は、ひたすら根気よく単語を記憶していくという一点に尽きる。大会で優勝を競い合うレベルともなれば、日本の受験勉強に匹敵するかというくらいの勉強量だし、本人だけでなく家族ぐるみで応援する様子もまた面白い。そうやって1年かけて培ってきた地道な努力が、たった数日間の大会で真価を問われるいう構図自体は、実は日本では甲子園を例に挙げるまでもなくテレビ番組の定番であるとも言える。日本ほどではないにせよアメリカのテレビでもこの手の番組は数々あるし、どんなものでもそれなりの面白さは存在すると思われるのだが、この『チャレンジ・キッズ』がここまでアメリカで熱狂的に受け入れられたのには、スペル大会というイベントに「アメリカらしさ」「アメリカ映画らしさ」を改めて見出すアメリカ人が多かったということであろう。


 一つは当然ながら、ルールの分かりやすい、誰でも参加できる競技であること。映画を見ていれば、英語圏の観客ならついつい子どもたちと同じ立場に立ってスペルを考えてしまう面白さがあるのだが、スペル大会ならではの面白さとして実際映画の中で出てくるが、万一知らない単語が出題されても、子どもたちはスペルを類推してピンチを逃れるシーンが多いのである。単語自体を実は知らなくても語源や発音などからスペルを推測出来るというのが一つのミソであり、わずか数十秒の間でピンチを脱出する子どもたちの反応は非常にアメリカ娯楽映画的分かりやすさがあると言えよう。


 この映画で優勝争いに残る子どもたちは黒人もいればインド系・東南アジア系の子どもたちもいるというように、人種をベースにした登場人物の把握しやすさもアメリカ映画的だし、これがそのまま文化的バックボーンに直結していく様子も興味深い。だが最も面白いことは、多くのアメリカ人がこの映画にある種の「アメリカンドリーム」を見出していることであろう。それは努力すれば報われる、というような単純な認識ではなく、勝負に勝ち残った者のプライド、惜しくも破れた者の健闘を讃えるスポーツマンシップ、などなどが一つにまとまった感覚であり、これこそがアメリカらしさだ、ということなのである。





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