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銀幕のいぶし銀・第101回

『いぬのえいが』

(2005年・『いぬのえいが』製作委員会・96分)

監督:犬童一心、佐藤信介 他
出演:中村獅童、小西真奈美、伊藤美咲、宮崎あおい、天海祐希

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 動物映画や子供の映画がヒットするというのは昔から映画界の定理であり、昨年も『クイール』という犬の映画がヒットしている訳だが、この春もまた『いぬのえいが』というタイトルそのままに、可愛い犬たちが大集合した映画がロードショーされる。これがいかにも企画先行のありきたりな映画かと思いきや、シンプルな中にも感動を呼ぶ、なかなかの注目作なのである。


 ペットで犬を飼ったことのある人や、身近に犬がいる人なら誰しも納得するような、犬にまつわる楽しいエピソードを数多く組み合わせた構成である。ドッグフードのCM作りに七転八倒するプランナーを描いたコメディ、主人の帰りをじっと待ち続ける犬の話、犬が取り持つ恋愛の話など、いくつもの犬の物語を積み重ねて一本の映画にまとめあげたのは、近年『ジョゼと虎と魚たち』という傑作を撮った犬童一心を中心に、CMなどで活躍している新進気鋭の監督たちである。中にはアニメあり、ミュージカルありと、バラエティに富んだショートムービーで次々と話を渡していく構成により映画の幅を広げていくのである。


 文字通り犬好きの人に贈る映画であるから、話は単純明快、可愛い犬の楽しさを追求した映画なのであるが、この作品がうまいのは、単に犬の可愛さだけではなく、ペットとして犬をかわいがる行為が実は人間の一方的な傲慢なスタンスにすぎないという反省点をよく理解して構成してあるところである。たわいもない話から感動的な話まで様々なエピソードが登場するが、その多くは人間世界のその時々の欲望のようなものによって振り回される人・犬の話であり、そこの局面に現れる犬たちはトリックスターのように人の迷いを解き放っていく役割を担っている。このように、人間の生々しい世界から離れて、純粋・純朴な領域に人を誘う存在としての犬、というように見ていくと、実はこのテーマは昨今流行りのいわゆる「純愛ブーム」にも通じていく。言葉の通じない犬と人間の間にわき起こる愛情は、たとえ一方的であっても確かに純粋なものだろうし、また犬というものが猫や他の動物と比べても、その純粋さに十分応えうる存在なのである。さらに愛情が深まっても、犬と人の間にはコミュニケーションの壁や種の壁がある以上、この関係性は悲劇にしかなり得ない。これこそが、単なる動物映画ではない「犬」映画の醍醐味である。考えてみればこのような意味での犬映画は、実にメロドラマの系譜以外の何物でもなく、それが観客に受けるというのはやはり日本映画ならではのリアリティを体現しているのである。





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