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銀幕のいぶし銀・第100回

『THE JUON/呪怨』

(2004年・アメリカ・110分)

監督:清水崇
出演:サラ・ミシェル・ゲラー

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 ここにきて日本映画の活況が報じられている。昨年度の興行収入は過去最高を記録し、観客動員数も増加傾向にあるという。しかもその要因として『世界の中心で、愛を叫ぶ』など邦画が好調だったというから頼もしい話である。そのような現状も関係しているのか、日本映画に集まる世界からの注目という点においても、恐らく今ほど期待の高まっている時はないといえよう。ヨーロッパの映画祭ではこれだけ数々の賞を取り、ハリウッドでは日本映画を含むアジア映画ブームが続いているのである。さらにリメイクブームの波もあり、『Shall We ダンス?』や『リング』など日本映画のリメイクも続々と全米公開され好調な成績を収めている。そのような流れの中で、ジャパニーズホラーの代表作の一つ『呪怨』もいよいよハリウッドリメイクされたわけだが、これが驚くべきことに全米公開時で二週連続一位、そして興収一億ドル突破という画期的な大ヒットを記録してしまったのである。日本人監督の作品としてはもちろん初めてのことで、輝かしい記録を引っさげて逆輸入の形で日本公開を迎えることとなった。


 東京で福祉を学んでいるアメリカの女子留学生がある老女の介護に向かうが、不気味な怨念の宿るその屋敷では関わったものたちが次々と謎の死を遂げていく。そして彼女も底知れぬ恐怖体験を味わうことになるのだが、この物語自体はオリジナルの日本映画とほぼ全く同じストーリーである。『リング』のリメイク『ザ・リング』もかなりオリジナルに忠実であったが、今回はさらにすすんで、主人公とその周りのアメリカ人以外は、舞台となる東京という場所、そして物語の軸になる日本家屋の構造に至るまで、本当にオリジナルと変わりがない。さらには監督だけでなくメインスタッフもほぼ日本人で固められており、その結果アメリカ映画でありながら普通の日本映画にしか見えない作りになっているのである。ここが、同じ東京を舞台にしながらも異文化の視線から捉えた『ロスト・イン・トランスレーション』と決定的に違うところである。


 世界各国から才能を常に集め続けることでその地位を維持してきたハリウッド映画の百年近い歴史の中でもこのような例はかなり珍しい。映画は確かに国境を越えて伝播する力があるが、今回の大ヒットは改めてそのことを痛感させられる貴重な例であり、メジャーリーグで活躍する日本人選手のように、日本の映画人も活躍する場が開けてきたという興味深い事態なのである。





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