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「銀幕のいぶし銀」第1回

『阿賀に生きる』('92、日本、115分)


★ '92 日本映画ペンクラブ・ベスト5
★ 第 24 回ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭
     銀賞・新鋭批評家賞・国際批評家連盟賞・エキュメニック賞
        その他、世界の映画祭等で各賞受賞
           (ビデオ;アミューズビデオよりレンタル・販売中)


  監督 佐藤 真
  出演 新潟県阿賀野川流域に住む人々

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 尾瀬を源流として日本海に流れ下る阿賀野川と、その周辺で昔ながらの生活を営む人々を描いたドキュメンタリー映画である。阿賀野川といえば、昭和四〇年のいわゆる新潟水俣病、その有機水銀に汚染されたのがこの川だ。

 『阿賀に生きる』はそんな重いテーマを背景にしながらも「こんなに心から晴れ晴れと笑えて楽しめる映画も近頃珍しい……」との映画評もあるように、人々の生活が実に軽妙な面白さを醸し出している快作である。

 登場するのは川沿いに住む老人たちだ。話好きの長谷川さん夫妻は、点在する小さな田圃を守り続けている。誇り高い遠藤さんは、二百隻以上の舟を造った舟大工。それに餅つき職人・加藤さん一家。それが皆七十歳前後の老人だというのに、この生き生きとした姿はどうだろう。長谷川さんが酔って歌いだす楽しい会話と笑顔。遠藤さんが初めて道具を披露するときの厳しい目。加藤さんのバカバカしい夫婦喧嘩。思わず我々も笑い転げてしまう程のエネルギーにあふれているではないか。

 映画は水俣病の事件性を声高に訴えたりはしない。映画にあるのは、まさしく彼らの普段通りの、ありのままの姿だ。そこにほの見える水俣病の陰に、ドキッとさせられる。彼らは川に住み、川と生活を共にしていた。そして彼らは今も川と関わり飄々と生きている。それが彼らの顔、皺のひとつひとつにくっきり刻まれている。そこにいいしれない魅力を感じ、感動してしまうのだ。

 撮影隊は丸々三年間かけて、かの地の人々と寝食を共にし、老人の生活を丸ごとフィルムにおさめるのに成功している。阿賀の生活に撮影行為が完全に馴染んでいるのが又素晴らしい。

 昔の鮭漁の話を聞いている最中に眠りこけてしまう長谷川さんや、インタビュー中に割って入る奥さん。阿賀の人々はキャメラを向けられても臆することなく普段の生活を続けている。時間と労力を惜しまぬ映画作りの成果であり、これこそまさにドキュメンタリーの真骨頂だ。その辺の安っぽいドラマなぞ吹き飛ばしてしまう面白さなのだ。だからこそ『阿賀に生きる』はこの手の映画としては例外的に、都内はじめ全国のロードショウ館で封切られビデオ化もされている。

 都会では考えられないようなゆったりしたリズムで、毎日を過ごしている阿賀の人々の素晴らしい姿を、この機会に是非御覧いただきたいのである。

                       96/10/04  矢部 浩也




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